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野球小説「ホットコーナー」

2009年03月23日 21:25

高橋三千綱
ホットコーナー (『カムバック』収録pp.145-173)
新潮文庫、1988年

 物語の舞台はプロ野球。

 広瀬康雄 … 主人公。
 池田義明 … 広瀬の後輩。昨季ジャイアンツの監督に就任。

 名選手、必ずしも名監督ならず。
かつてジャイアンツの星と謳われた天才・池田は苦しんでいた。
監督一年目、昨季のジャイアンツは5位に終わりファンを落胆させた。
 二年目を迎えるにあたって池田は、大胆な人事を行う。
ライオンズの大打者、広瀬のジャイアンツ二軍監督就任。
 その時点で広瀬に対してヘッドコーチの打診や監督就任要請があったことは、
すでにマスコミの知るところであった。

 だが、この人事は広瀬からの申し出であった。
池田に対しての、「恩義」からの打診。

 広瀬は現役時代、キャリアの最初はジャイアンツに所属していた。
そこでは同じポジションの後輩、池田の影に隠れ、
チームに飼い殺しにされていた、というのが世間の評価である。
 広瀬は何を思って二軍監督に就任するのか。

ネタばれポリシー
ありがとう、
と彼は胸の中でもう一度呟いていた。


 物語冒頭の広瀬は、
テレビ局、ラジオ局との専属契約。月刊雑誌に2本、週刊誌に1本の連載。
スポーツ紙の仕事に地方での講演活動。年収は2500万。
まあ、一流選手のグループに入ってる人、ですよね。
そんな人がそれらを全部捨ててかつてのチームメイトのためにってのは
なかなか胸が熱くなるいい話です。

 二軍監督就任が決定してから、
広瀬が現役時代を振り返る、という物語の展開。

 池田のキャラ設定は、
裏表がなく、純粋に野球を楽しむ人物…とにかく人間的魅力にあふれています。

 1ページ目で池田を可愛らしい人物に見せることで、
また広瀬の真面目さを書くことで、安心して読める短編に仕上げてます。
 要するに、実は弱みを握られていたんだ―的な話じゃないな、と
ちゃんと読者に分からせている。友情物語であることをはっきり断っています。

 広瀬池田に対する色眼鏡を外したのは、多摩川で彼の練習を見てから。
当時の監督、コーチが押し付ける「教科書的」な指導方法とは違い、
それでも明らかに理にかなっている池田理論に感心したわけです。

 また、池田にはジャイアンツで完全にトレード要員化していた広瀬が、
他チームに対して高く売り込めるように、
故障と偽って欠場する男気もありました。

 31歳、ライオンズで首位打者を獲った広瀬を、
不遇の20代を過ごした選手と周囲は考えていますが、
 その能力は池田の努力を見て身に付けたものであり、
新天地で活躍の機会が与えられたのは池田の芝居によるものだったのです。

 その恩に応えて2500万の生活を捨てる広瀬も大人物。
 物語にアップダウンがないので、強い感動はありませんが、
いい読後感を得ることができる作品です。


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