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野球小説「セカンド」

2009年02月19日 21:28

高橋三千綱
セカンド (『カムバック』収録)
新潮文庫、1988年

 舞台は高校野球部、陽明高校野球部。

 村中幸夫 … 主人公
 倉内健 … チームメイト。左腕のエース。
 鈴木 … チームメイト。三塁手でチームの中心打者。

 好打と堅守、たゆまぬ努力でチームを支える幸夫
だが自分の能力を吹聴するタイプの人間ではなく、
また取り立てて体格がいいというわけではない彼の存在は、
倉内鈴木と違ってほとんどの者の目には止まらなかった。

 恵まれていない家庭に生まれた幸夫は、
野球を続けることなどできないことを知っていた。
 大学進学の費用も馬鹿にならない。
さらに学費、生活費を考えれば、野球を続ける余裕などない。

 夏の甲子園に出場することになった陽明高校。
幸夫の最後の野球が始まる。

ネタばれポリシー
全員が、あっという表情で幸夫を見た。

【読んだフリ! ストーリー斜め読み】

1. 甲子園出場で盛り上がる陽明高校野球部
 倉内鈴木、投打のチームリーダー、仲よくはない様子。
部室でモメてます。またここで幸夫のおとなしさが描写されてます。

2. 幸夫の家庭事情
 父は弱電メーカーの営業。しかし幸夫が小学校に入る年に亡くなってます。
母親は呉服のセールス。しかし、老いのせいで年々成績が落ちてます。

3. 幸夫の少年時代~現在までの略歴
 地味な幸夫にも華々しい時代がありました。
中学三年の時はちょっと名の知れたピッチャーだったのです。
 しかし立ちはだかる壁、倉内
 同期の彼のせいでバッティング投手(味方の打撃練習用ピッチャー)に。
連日の投球のせいで肩を壊し、セカンドとして練習を開始します。

 でもこのセカンド転向もチームメイトに気づかれないなんて…。
ある意味ギャグの域、幸夫の影の薄さ。


4. 幸夫の静かな決意
 大学に行くことは母の願いであり、幸夫の希望でした。
しかし入学だけで80万、ここに学費と生活費を足すと…。
とても野球は続けられないと考えた幸夫は、
夏の甲子園を最後の舞台にしようと決意します。

 要するに、謙虚なんですね。
自分の能力ではプロにいけないと思ってる。
 で、大学野球に進みたいけど、金が無い。


5. 健闘、しかし敗退
 最終的にベスト8まで勝ち進んだ陽明高校はしかし、
準々決勝で9点を取られ敗北します。

 何対9かは分かりません。
 また、実は幸夫の肩は完治していたことが書かれてます。


6. 猫誘拐
 秋。
 倉内鈴木はプロを見据えて練習に参加しています。
 一方、商業科の強いある私大を狙って受験勉強をする幸夫
 ある日猫を見つけて拾ってきます。ところがそれは飼い猫で、
数日後の新聞に飼い主がうった広告が掲載されます。
「迷い猫を見つけた方に10万円の謝礼金」。

 幸夫は、広告主に謝礼金10万を要求するのではなく、
なんと身代金50万円を要求します。
 そしてまんまとせしめるのです。

 なんで!?

7. 運命のドラフト
 プロ野球ドラフト会議の日。
 倉内は?鈴木は?彼らを取り囲む人垣とともに、
蒼白の面持ちで両名はドラフト発表を待ちます。
 その時!
 慌ただしく教頭が倉内幸夫のいるクラスに入ってきます。

 「村中(幸夫)君」

 「せ、西武が、き、君を、ドラフト2位で指名した」

【感想】

 幸夫は全体を通して達観した若者のように書かれてます。
倉内の存在も、決してひがむではなく、違うレールに乗っている、と。

 そう考えられる幸夫ですが、だからこそ、
シャム猫の広告主に、「倉内 千代」という文字を見たとき、
倉内の恵まれた環境に対するモノがどっと出たんでしょう。

 このどっと出たモノ…妬み、ではないと思います。
甘え…というか、とにかく自己正当化の一種だったと思います。
「あいつは恵まれているのだから、50万くらい貰ってもいいだろう」
 なぜなら、猫は決して盗んだのではなく、拾ったものだから。
盗んだのなら妬み、と判断できますが、そうじゃない。

 ところが、フタをあけてみればドラフト2巡目で西武に指名された自分。
おそらく3巡目、4巡目…となれば、倉内も指名されるのでしょうが、
自分の方が評価され、これからはより恵まれた存在になるのです。

 だからこその最後の一文が、

 雨に打たれ、泥にまみれたセカンドベースが、
 静かに幸夫の胸に浮かび上がってきた。

になるのだと思います。
 後悔、それも、単純に「悪いことしちゃった~」ではなく、
犯す必要のない罪を犯してしまった後悔。悪人の後悔だと思います
 脅迫電話を掛けた時の描写があるのですが、
幸夫は罪悪感を見せていません。それも、私のこの解釈に繋がります。

 野球のベースは、知らない人などいないと思いますが、白い。
これは彼自身の比喩だと思います。
中でもセカンドベースであったのは、彼のポジションから。
 雨天の練習中に見たことがあるのでしょう。
それがイメージとして浮かび上がってきた、と。


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